誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ15
『もしそうなら、いつか必ず何処かで逢えるって…あっちか、こっちのどちらかで……あっ!此の話、前に君に話したかな?だったら…ごめん…』

患者さんの事を話し続けた彼は、不意に気付いた様子で私に尋ねたのです



『いや、それは…別にいいよ…』

以前彼から此の話を聞いていたとしても、それは私には余り影響を与える話ではありませんでした

例え聞いていたとしても、それは些細な事なのです

今一番問題なのは、彼が何故此の場で繰り返したのかです



『だから、僕は信じる事にしたんだよ…彼女の言葉を…』



『そう…なんだ…そうだよね、きっと』

だからその時彼に掛ける言葉を、私はその言葉しか見付ける事が出来なかった



『ありがとう…君は…君はもう一度逢いたい人はいるの?』

そして病室長の息子は、数歩先の地面を見つめたまま私に尋ねたのでした



『…』



『あぁ、ごめん…言い難いなら、別に良いよ…さてと、そろそろ戻ろうか、皆が騒ぎ出す前にね…彼奴の話の続きも気になるし』



『…そうだね』

私はそう短く答えながら、彼の言葉の真意を考えて…いいえ、私は別の事を考えていたのです

それとは別の事を…

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あきゅろす。
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