誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ9
.
『どうしたんだろう?少しスピードを落としますか?』

曲がりくねった山道が直線に差し掛かった途端、急にスピードを落として車間距離を広げた後続車を気遣って、僕は隣りに座る彼女に声を掛けたのですが、彼女の返事は素っ気無いものでした

けれども、彼女の返事は、僕にとっては都合の良いものだったのです

それは車高の高い四駆の放つ眩いヘッドライトの光が、僕の車の車内へと差し込み、僕の視界を狭めていたからでした



『でも、本当に大丈夫…かな?』

それでも僕は、車内を照らす二つのライトの変化を、多少は気にしていたのです



『先輩…僕の兄さんに…皆に何があったんでしょう?先輩から連絡を受けてから、何度も兄さんの携帯に電話を掛けてみたんです…だけど、一度も…先輩!あなたには…分かるんでしょう?』

僕は助手席に黙って座って居る、大学の先輩だと名乗る彼女に再度尋ねてみたのです

けれども、彼女の返事は同じでした…





『そうか…やっぱり知らないか…』

助手席に座る後輩の返事は、前と同じく変わりませんでした



『でも…一つ思い出した事があるんです…確かあそこって、以前に誰かが亡くなっていますよね?』

[前頁へ][次頁へ]

9/96ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!