誰かに聞いた怖い話
・・・疑惑から疑心へ8
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ブレーキランプの真っ赤な明かりを時折点して、彼の車は暗く曲がりくねった山道を滑らかに駆け抜けて行きました
そしてペーパードライバーの僕はと言えば、慣れない四駆の運転席に収まっては居たものの、シートにゆったりと座り込む事も出来ずに、出来うる限りフロントガラスに顔を近付け、暗闇を照らし出すヘッドライトの明かりと前車のテールライトだけを頼りに、その山道を必死について行こうとしていたのです
けれども、前車との車間距離は開くばかりでした
ですから僕には、隣りに座る後輩と話す余裕など無かったのです
だから僕は待ちました
曲がりくねったカーブが一段落して、山道での数少ない直線に車が差し掛かるのを…
『ねぇ…此から何が起こるのか…本当に何も聞いて無いのかい?』
助手席に黙って座る後輩に、僕は同じ質問を投げ掛けたのです
その為アクセルを踏み込む右足への関心が、一瞬疎かになっていたのでしょう
前車との車間距離は、見る見る内に開いていたのです
もっとも、それで良かったのかも知れません
僕の運転する四駆は車高が高い為、余り近付き過ぎると車内にヘッドライトの一部が差し込んでしまうでしょうから…
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