誰かに聞いた怖い話
・・・羊頭狗肉15
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『当たり前じゃないですか、事件にはならなかったんですもの…あの店で買い食いをしていた…あなたでも知らなかったんでしょ』

夫の疑問に対して、彼女は答えたのです

そして彼女は、こうも付け加えたのでした



『誰も心にやましい事は喋らない、でもそれは当然の事でしょ、自分の本意では無いとしても…人には言えない後ろめたい事をして来た従業員が、他の人にべらべらと喋る筈が無いじゃないの…それに私だって彼奴が怖いもの、今回捕まって有罪になったとしても、どうせ数年かしたら刑務所から出て来てしまうし…あの時の一件は既に時効になっていて、もうどうしようもないもの…』



『そうか…でも、此の町には二度と帰っては来ないよ』

私の夫が言ったその一言は、私にとっては気休めにしか聞こえませんでした

私には予感がしていたのです

きっと彼奴は帰って来る…

味をしめた此の町に…きっと帰って来る



『あなた…此の話は、此処だけの話にして頂戴…誰にも言わないで欲しいの』



『何故だい、もう時効になってるんだろう?なら、別にこいつが逮捕される事は無いから、もう話したって大丈夫だろ』

私の心配をよそに、彼はそう言いました

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あきゅろす。
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