誰かに聞いた怖い話
・・・ミーコ14

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『素材って…アレですよね』



『そう…既になめしてある皮だよ、それを父達は出入りの業者から買っていたんだよ』

『ところが…ある時伯父の元に、存じよりのお大尽から急ぎの注文が入ったんだ…金に糸目はつけないから、これ以上は無い程の立派な三味線を、至急作ってくれ…と』

『久し振りの羽振りの良い話に、伯父は寝食を忘れて三味線を完成させようとしていたよ』



『けれども、何度作っても気に入る音色を出す事が出来なかった…それで伯父は日頃から目に付いていた、素晴らしい毛並みの猫の毛皮を使う事を考えたんだよ』

『勿論、立派な飼い主のいる飼い猫だと云う事は、誰が見てもわかる程手入れの行き届いた、綺麗な色艶をしていたんだ』



『伯父さんは、それを…』



『…そう』

『人に良く馴れたおっとりした性格だったから、捕まえるのには然したる問題は無かったらしい…』

『伯父はその猫を…』



『…』



『そして皮に疵を付けない様に、ゆっくり…ゆっくりと…』

『結局…伯父は約束の期限を遥かに遅れて、自慢の三味線を納品したんだよ』



『でも…それじゃあ、その猫が祟ったって事ですか』



『違うんだ…』

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あきゅろす。
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