誰かに聞いた怖い話
・・・ミーコ5
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それから程無く、俺は酒の力と優しく適度に揺れる車の振動で、シートに深々と座り込んだまま…ぐっすりと眠り込んでいたらしい
そんな俺が目覚めたのは、急に胸を締め付けたシートベルトと、アスファルトに削られたタイヤのたてる、甲高い音でだったんだ…
余りに突然の出来事で、いまだ意識の覚醒をしていなかった俺だが…ミーコの運転していた車が、道路の左端に急停車した事くらいは直ぐに気付いたんだ
『あいたたっ…ミーコどうしたんだ?』
少し眠ったせいか、酔いも少し醒めて来ていた俺は、ハンドルに突っ伏したまま肩を震わせているミーコに声を掛けていた
『どうしたミーコ?怪我でもしたのか?』
『…』
『大丈夫か、何処か痛いのか…ミー……』
『ご免…』
何度目かに掛けた言葉を遮る様に、ミーコは不意に謝って来たのだった
『…大丈夫か』
『…ご免ね、私…結婚出来ない…』
『?』
『私も…お姉ちゃんみたいに…』
漸く顔を上げてそう言ったミーコの頬は、二つの眼から伝い落ちる泪で濡れていた
『いったい、どうしたんだよ』
『私…轢いちゃったの…だって急に飛び出して来るんだもん』
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