誰かに聞いた怖い話
・・・三毛猫2
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『重い症状の患者さんの入った病棟の北側に面した窓からは、遠くに霞む山並みが、そして南側の窓からはこの病院に囲まれた小さな中庭が見えるんだ』

『その中庭の真ん中には、大きな木が一本植えてあり、その下には小さなベンチが幾つか、その木を取り囲む様にぐるっと並べられていた』

『そしてそこには、いつの頃から住み着いているのか誰も知らないけれど、二匹の大きな三毛猫が、昔から…そう、ずーっと昔からそこに居た様な態度で棲み着いていたんだ』

『その二匹は大変仲が良く、いつも青々とした芝生の上で長々と寝そべったり、ベンチに座る患者さん達の横で、鞠の様に丸くなり眠って居たりと、病院のマスコット的な存在にすらなっていたんだ』

『病室の外に散歩に出られる、比較的症状の軽い患者さん達は、見舞い客から頂いた食べ物を分け与えたり、中にはわざわざ家人を、ペットフードを買いに走らせた患者さんすら居た様だった…』

『そして、中庭へ出る事すらもままならない症状の重い患者さん達も、自分がいつの日かその猫達と戯れる日が訪れる事を信じて、毎日の苦しい闘病生活の励みにしていたんだ』

『けれども…枯れ葉が舞い落ちる、秋のある日の事だった…』

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あきゅろす。
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