誰かに聞いた怖い話
・・・迎えに来るもん17
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炊事場を照らし出した明かりに、ぼんやりと浮かび上がる一人の少女を…私は見たのだ
急に様子のおかしくなった、先生の身を案じて取り囲んでいた生徒達の中にも、偶然その少女の姿を目撃していた者が居たらしい
その少女が不意に…そうまるで霧か煙が消える様に、後ろの景色にスーッと吸い込まれた時、その場の誰かが駐車場の方を指差しながら悲鳴をあげたのを、私は耳の奥に聞いていた…
その光景を目の当たりにした数人の生徒の口から、話はその場の参加者に瞬く間の内に広がり
数人で固まって泣き出す者達…
蒼白な顔をしながらも、炊事場の方へ見に行く者達…
そして、気を失った先生の周りに座り込む者達…
その場は騒然としていた
そうして…この騒ぎを聞き付けて来た教頭先生により、各自のテントへと解散が命じられたのだった
だから…先生が気を失う直前、うわ言の様に呟いたあの一言は、私の他は委員長くらいしか聞いてはいなかっただろう
彼は虚ろな瞳で、こう言ったのだ
『まだ…迎えを待ってたのか…』
私は味気ない英語の授業を受けながら、右斜め前の誰も座らぬ席を見つめている
彼女は、彼を追い掛けて行ったのだ
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