誰かに聞いた怖い話
・・・アーチ13
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『どう違ったんだ?』
『…』
『その女性は、警察に逮捕されたんだよね?』
『…』
『まさか…逃げたんですか?』
『…』
友人達の問掛けに、彼は直ぐには答えなかった
『君の友人の…先輩達の話の結末って云うのは、いったいどんなだったんだい?』
私は黙りこくった彼に向かって、そう尋ねていた
『…それが』
そう言い澱むと、彼はコップに残る焼酎の水割りに、口をつけようとしたのだった
しかし、彼はそれを口にはしなかった…
彼の持つコップの中には、一匹の羽虫が小さな波紋を立てていたからである
そしてコップの中身を後ろに投げ捨てた彼の為に、私は紙の使い捨てのコップに、焼酎を底から人指し指一本分程入れ、このキャンプ場の入口付近にある炊事場から汲んで置いた水を、コップの八分目迄注ぎ込み、無言の彼に手渡していた
彼は無言でそれを受け取ると、一気に飲み干したのだ…
彼は、いつもはこんな飲み方はしなかった
何かが違う…どこかがおかしい…
私は一人、そう感じていたのだった…
『警察は、友達に話を聞くだけ聞いて、詳しい事件の内容は、一切話してはくれなかったそうだ…』
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