誰かに聞いた怖い話
・・・アーチ12
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けれども僕は気付いていたんだ、その存在に…
彼女の姿が化け物に映ったのは、僕の単なる見間違いじゃ無いって事に…
『何でこんな事…』
その凄惨とも云える笑みを浮かべた彼女の後ろに、僕は彼女とは似ても似つかない別人の女性の顔を、見付けていたんだ
それは彼女に覆い被さる様に、彼女の身体に重なっていた
『…』
この時僕は…知らず知らずの内に後退っていたのに、自分では全然気が付いてはいなかった
そして、彼女がその物体を新たな塊にしようと、手にした刃物を突き立てた時には、彼女の身体は風呂場のドアに遮られ、彼女の頭しか見えていなかったんだ
解体を続ける彼女は…こちらを見なかった…
まるで、僕には興味が無いかの様に…
けれども、彼女では無い別人の彼女は、僕の方を見てニヤリと笑っていた…その顔を朱く染め上げながら…
結局、アパートの隣の民家に駆け込んだ僕の話によって、その事件は発覚したのだった
第一発見者と云う事で、当初は僕が疑われていた
けれども、捜査が進むに連れて、僕のアリバイは直ぐに立証された…
しかし、僕の供述と事件の状況証拠には、奇妙な疑問点が幾つか現れたらしいのだ
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