誰かに聞いた怖い話
・・・アーチ8
.
『どうしたんですか?部屋も真っ暗なままで…』



『手伝って欲しいの…上手く出来ないの…お願…い…』



『…はい』

何で先輩の部屋の中は、明かりも無く暗いのだろうか…

何で彼女は…明るい廊下へと姿を顕さないのだろうか…

何で彼女は…先輩じゃなくて僕に頼むのだろうか…

僕は不審に思いながらも、先輩の彼女の方へと…ドアの方へと近付いて行ったのだった



『中へ入ったら…ドアを閉めて……こっちよ…こっちへ来て…』

明るい廊下から、薄暗い玄関へと急に入った僕の瞳は、後ろ手に閉めたドアの隙間からの微かな光を失い…

独り闇の中に取り残された様な…そんな不安な気持ちから…明かりのスイッチを探し出そうと、無意識の内に壁に手を這わせていたんだ



『こっちよ…早く来て…そのまま、真っ直ぐ…』

そんな僕を急き立てるかの様に、暗闇の中に斜めに走る光の方角から…彼女の声が聞こえて来た



『はい』

暗闇に目が馴染み始めた僕は、スイッチの場所を探すのを諦め、靴を脱ぐと壁に左手を添えながら、恐る恐る足を踏み出したんだ…その声が聞こえた方へ、恐らくは風呂場の方へと…

でも、この時僕は気付くべきだったんだ…

[前頁へ][次頁へ]

52/97ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!