誰かに聞いた怖い話
・・・アーチ7
.
『こんばんはー』
……
『…おかしいな、先輩…まだ帰っていないのかな』
僕の時計の長針は、既に3を差していた…
先輩の帰宅予定の時間からは、もう一時間が過ぎ去っていたんだ
『先輩、こんばんはー』
………
『やっぱり留守か…どうしよっかなぁ……よし!ここに居てもしょうがないから、近くのコンビニで立ち読みでもして来るかな』
そう独り呟きながら、アパートの2階の廊下を歩き始めた僕の後ろで、ギィーと軋みながらドアが開いたのだった…
『!』
慌てて後ろを振り返った僕の瞳には、およそ20cm程も開いている、先輩の部屋の扉が映っていたのだった…
『なぁーんだ…居るんじゃないですか、てっきり僕は留守かと思っちゃいましたよ……先輩?』
僕はドアの隙間に向かって、声をかけていた
『…って欲しいの…お願い…』
『…えっ?、その声は…』
けれども…そのぽっかりと開いた暗闇から聞こえて来たモノは、先輩の声では無かったのである
そこから聞こえて来たのは、弱々しい女性の声だったのだ
そしてその声は、僕の聞いた事のある声だった
『手伝って欲しいの…お願い…』
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