誰かに聞いた怖い話
・・・古都24

.
『?』

(友人は、何を言っているんだろう…あの坊さんは、綺麗に剃った頭をしていたじゃないか…寺に昔から伝わる話を、僕達にしてくれたじゃないか)



『折角寺の由来を話してくれているのに、君は塚石の方ばかりを見て、ぶつぶつと独り言を言ってて、全然話を聞いていなかったろう…』



『そんな…あの時僕は、悲惨な最期を遂げた子供の、双子の弟の話だとかを聞いたよ…君も聞いてたろ?』



『何を寝惚けているんだよ、そんな話は出なかったぜ!』

『そうだ、ほら!これを見てみろよ』

彼は比較用にと持参したデジカメを取り出すと、僕の方へと差し出したのだった



『…』

そこに映っていたのは、僕には見覚えの無い一人の初老の男性だった…

そしてその頭には、短く刈り揃えられた毛髪が、しっかりと映っていたのである



『何故…』

そう呟く僕の瞳に一瞬微かに映ったモノは、ライトアップされた色とりどりの紫陽花の、花に混じって映し出された…蒼白い無数の顔だった…





『これが…僕が以前体験した話なんだけど…結局の所、僕が何者なのかは…』

『それに…あの時、車窓から見えた蒼白い無数の顔の中に、あの家族の顔が…』

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