誰かに聞いた怖い話
・・・古都7
.
彼等は追っ手の追捕から逃れる為に、屋敷からは遠く離れた、この地蔵様に程近い切り通しを目指していた

彼等がそこを目指したのには、理由があったのである

追っ手から逃れる彼等は、今でも伝説の残る地蔵様に…いや、違う…その地蔵様に日々御参りをする、塩売りの者達に用があったのである

このお地蔵様は、早朝に古都へ塩を売りに行く者達が塩を御供えすると、彼等が塩を売り払った代金で買い込んだ品物を、荷車に山積みにして帰る夜半迄には、御供えした塩が必ず無くなっていると云われていて、この頃の者達には深く信心されていたのであった

そして追っ手から逃れる一党は、藁をも掴む心境で存じよりの塩売りが通るのを、小さなお堂の後ろに潜み、今か今かと待っていたのである





彼等に運があったのか、それとも神仏の加護のお陰か、彼等の潜むお地蔵様のお堂に近付く人の気配と、荷車の軋む音が聞こえて来たのだ

そして彼等は、お堂に御参りしている塩売りの前に、ばらばらと躍り出たのだった



『ひぃ!』

その塩売りは、彼等を古都に蔓延る盗賊の一味と思ったらしいのだ

それ程、彼等の身なりは乱れに乱れ、髪は焼け焦げ、顔は煤けてわからなかった

[前頁へ][次頁へ]

27/97ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!