誰かに聞いた怖い話
・・・暫しの別れ2
.
先生の最後の小さな呟きは、残念な事に私には良く聞き取れませんでした
でも親友には聞こえていたのか、さっきからその顔に冴えない表情を浮かべているのです
けれども…その理由を彼女に尋ねるのは何故か憚られ、私は彼女の様子をそっと窺うだけに留めていたのでした
『う…うぅ…んっ………こ、ここは?』
あれから10分程はたったのでしょうか、漸く先生は意識を取り戻し辺りを見回していましたが、不思議な事に先程の記憶の一部を失っていたのでした
いいえ…正確には、先生の記憶ではありません…
元々…先生は知らなかったのですから、その事を…
その事はこの後で交された先生との会話で、この場に居合わせた私達全員が知る事になるのです
『私…どうしちゃったのかしら?』
『良かった』
『大丈夫ですか?先生は話の途中で、急に気を失って倒れたんです』
私は先生の額を濡らしたタオルで冷やしていた後輩の肩越しに、まだ意識が定まらない様子の先生に話し掛けたのです
『そう…なの…』
先生はそう言って、心配そうに先生の顔を覗き込む私達を一人一人確認するかの様に、見つめたのでした
『本当に良かった…』
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