誰かに聞いた怖い話
・・・悲しい結末3
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『あの子は廊下を挟んで向かい合う暗い部屋の片隅で、たった一人っきりで震えていました』
『あの子は見ていたのです、自分の一番大好きな大切な人が、何も言わない塊に変わってゆく所を…あの子は薄暗い廊下の闇の中から……じっと見ていたのです』
『…』
そう言った時の先生の顔は、先程よりも更に蒼白く感じられ…いつしか私の身体には粟粒の様な鳥肌が生じ、身震いを抑える事が出来ませんでした
『彼には、あの子の居場所がわかっていました』
『彼はあの子が小さい頃から、仕事の合間に隠れんぼや、鬼ごっこの相手をしていたからです』
『彼は…自分の弟の様に可愛がっていたあの子を…』
『大恩ある旦那様の子を……探していました…私の為に…』
『そして…彼は見つけ出したのです…部屋の片隅に置かれた衝立ての陰で…一人蹲り小さく震える姿を…』
『そして彼は……』
先生はそこで話すのを止め、ゆっくりと目を閉じました
『…』
私達は誰一人喋らずに、先生が再び話し始めるのを待ったのです
『あの子は、自分が先程見た光景を悪い夢だと思っていました、そして蹲る自分を見下ろし、にやりと笑みを浮かべる彼の事も…』
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