誰かに聞いた怖い話
・・・10年後の再会7
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『先生…』
『そんな!』
『えっ!』
『先生が癌だなんて…そんなぁ』
驚き泣き出した後輩達を目にして、先生は慌てた様子で言葉を重ねたのです
『ちょ、ちょっと待って頂戴、私じゃないわよ』
『?』
『…』
先生の言った意味が判らず唖然としている私達に、先生は更に言葉を重ねました…
『私の夫よ…私の旦那が癌なの…』
『良かったぁ!あっ、痛い…先輩何を…』
『あっ…せ、先生すみません…ごめんなさい』
私は癌になったのが先生ではないと聞いて、安堵感から思わず良かったと口走ってしまい、先輩にお尻をつねられた痛みで…自分の言った言葉の意味に気付いたのでした
『本当に馬鹿なんだから…』
『全く…』
『先輩…変わりませんね』
私は皆の言葉に、その場に穴があったら入りたい気持ちで一杯でした
けれども、そんな私に先生は優しかった…
『良いのよ…悪気があった訳じゃ無い事は、私が良く知ってるから…ねっ』
先生はそう言ってから、自分の気持ちを落ち着ける様に目を閉じました…そして暫くの後に話し始めたのです
『私ね…あの家を出ようと思うの…勿論夫を見送ってからだけど…』
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