誰かに聞いた怖い話
・・・海岸の兄弟11
.
『いつもの兄なら直ぐに気が付いたのでしょうが、生憎と風邪を少しこじらせていたせいで熱があったんだと思います………』



『それで気が付かなかったんですか?』

俺の問い掛けに彼が微かに頷いた……



そっと涙を拭うと男が話しを続ける…

『きっと熱で意識がぼ〜っとしていたんです……その為にいつもなら分かる私と弟を勘違いして……』

『…兄は溺れている弟を助けようとして……いや、溺れている振りをしていた私を助けようとして海に飛び込んだんです』

『………心臓麻痺でした……肺炎になりかけていた兄の心臓は……急激な温度の変化についていけなかったんです…』

『弟の嘆き悲しむ様は、見ていられないものでした…』

『大切な…一番大好きな兄を……自分の悪戯で殺してしまったんですから……勿論、私も弟と同罪です…』



いつしか座敷の中に聞こえて来るのは、男の声と…俺の彼女のすすり泣く音だけだった…

でも、そうすると…?

俺の疑問は男の次の言葉によって晴らされるのであった



『弟はあの日からおかしくなったんです……』

『そして…とうとう兄が亡くなってから3年後の、兄の命日の日に………』

[前頁へ][次頁へ]

11/93ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!