誰かに聞いた怖い話
・・・海岸の兄弟7
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俺と彼女は互いに無言で朝日に照らされた海を眺めていた…
最後の言葉の意味がわからず…
それから旅館に戻り玄関を入ると、心配顔の女将さんと仲居さんが待って居たのだ
女将さんの話しだと、俺達の荷物はあるにも関わらず部屋に居なかったので、食事の準備が出来たことを知らせに来た仲居さんが女将さんに知らせたそうだ
どうやら、心中かと疑われたらしい…
その誤解を晴らすために、俺は今朝ここの従業員に出掛ける事を話した事や、その従業員との悲しい話しを女将さんに聞かせてあげた…
すると最初は怪訝そうだった女将さんの顔色が変わり、笑顔も消えていた……
俺の話しは終わったのだが、その場にいた誰もが喋らない……
『そうですか…もう10年になるんですね…』
不意に女将さんが小さな声で呟いた…
『あの……お客さま…御時間頂けないでしょうか?……逢って頂きたい方がいるんです…』
『ええ、これから帰るだけだし…それは構いませんけど…』
『それより…あの従業員の方は?』
『さっきから姿が見えないようだけど…』
俺の問いかけに女将さんは無言で…その話しも一緒にお話しします…と答えるのみだった……
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