誰かに聞いた怖い話
・・・同じ道7
.
『それって…何時間も経っていたって事なの?』
私がそう尋ねると、彼は即座に否定した…
『いや、違うんだ…そうじゃないんだ……これから続きを話すから聞いてくれ』
俺はここが何処なのか知るために、車をゆっくりと走らせた
残念ながら町には遠いのか、なかなか地名の書いてあるものが見当たらなかったのだが、やがて三叉路の信号に道路標識がつり下げられているのを見つけたんだ
俺は愕然とした…
その標識には有り得ない地名が書いてあったんだ
俺は峠から帰る為に西に向かって車を走らせていた…その証拠に車のリアウインドからは、血の滲んだような満月が見えていた…
それなのに…俺は今、車のフロントガラス越しにその月を見ている…
俺が今いる場所は、峠の東側…それも隣の県だった…
しかも驚いた事に、今いる場所に来る迄に30分もかかっていないのだった…
ここから峠迄はどう見積もっても、一時間位はかかる筈だった
俺にはその現実を理解する事が、到底出来なかった…
『でも…この体験は俺だけじゃあなかったみたいなんだ』
『後日、峠で会った娘のスナックに行った時に、彼女の口から聞く事が出来たんだ』
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