誰かに聞いた怖い話
・・・ふたつの祟り6
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その晩…その若者は苛つきながら会社の車を飛ばしていました…

…今日は2人で一緒に食事に行こうと、前々から妻と話し合っていたのでしたが、夕方になって上司から急に取引先の接待を命じられ、その事が原因で妻と喧嘩をしていました…

今日は2人の結婚記念日だったのです…

接待の席で少し飲んでいたし…車の外はワイパーが効かない程の豪雨であったのも、彼の気分を苛つかせる原因の1つでした…

当時はまだ走っている車も少なく飲酒運転にも寛大な頃でしたが、普段妻から口やかましく注意されていたので、飲酒運転の事をきっといつも以上に注意されると思うと…益々気が滅入って来るのでした…

そんな幾つもの理由が、彼の神経を苛つかせアクセルを踏み込む力を強くさせていたのだと思います…

益々激しくなる雨に視界を奪われ、車を停めて雨が小降りになるのを待ちたくても、彼の帰りを待っている妻をこれ以上怒らす訳にはいきません

そんな彼の車のフロントガラスを、激しい衝撃と共に突然破って飛び込んで来たモノがありました…

そのモノは…虚ろな瞳を開けて…助手席から彼をじっと見詰めていました…

そのモノは、彼の良く知っている人でした…さっき迄は…

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あきゅろす。
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