誰かに聞いた怖い話
・・・御神木6

.
『逃げろ!』

『危ない!』

『キャー』

伐ろうとする者に祟ると云われている御神木の最後を、一目見ようと怖いもの見たさに集まって、遠巻きに眺めていた村人達の悲鳴にも似た怒声に、斧を振るっていた男は慌てて倒れて来る老木を避けていた…



バキバキバキバキ…ズズーン…

銀杏の木が倒れる音が辺り一面に響き渡った…

…しかし、そこに居た人達は、それとほぼ同時に別の音を聞く事になった

ガッシャーン…





銀杏の巨木はどうやら幹の内部が腐って空洞化していた為に、老木は予定していた方向には倒れずに、木を伐っていた男の方向に倒れて来たらしい…

幸いにも男はかすり傷一つ負わず無事であったが、男の乗って来た自動車は男の代わりに銀杏の巨木の一撃を受けて、見る影も無い状態であった…



『……これが祟りか…』

慌てふためく周りを余所に、男は小さく呟いた…

その呟きを聞いたのは…工事を請け負った建築会社の社長ただ一人だけであった…

後日、無事屋敷も出来上がった御披露目の日に建築会社の社長は、旦那さんからその時の言葉の意味と、御神木に初めて斧を振るおうとした時に躊躇して辺りを見回した理由を聞く事になる…

[前頁へ][次頁へ]

29/97ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!