誰かに聞いた怖い話
・・・御神木3
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辺りに響き渡った突然の悲鳴に、ただならぬ気配を感じて振り向いた男と、従業員の悲鳴に驚いて振り返った建築業者の目に映ったものは、呆然と立ち尽くす現場監督と伐採の助手をしていた若い衆…

そして真っ赤な霧を吹き上げながら、地面を転げ回る男であった…

その男とは…先程迄、銀杏の木に斧を打ち込んでいた男である



『何を見ている!早く、手当てをせんかぁ!』

『電話や!お前は救急車を呼んで来んかい!』



流石に一番早く我に返ったのは建築会社の社長であった、現場に事故と怪我はつきもので場慣れしていた

現場監督は転げ回っている男に近付き、何か話し掛けながら必死に止血をしている

若い衆は社長にどやし突かれ、電話を借りに村長の家に走り出していた…



『救急車なんか待ってたら間に合わん!直ぐ車に乗せて隣町の病院へ運ぶんや!』

その時…男が冷静に判断して指示を出した

男はこんな時でも慌てなかった…男は焼け野原の東京を、たった一人で生き抜いて来たのだ…





怪我をした従業員は思ったより重傷でした…

柄が折れて顔に向かって跳ね返って来た斧から、顔を守ろうと反射的に出した右手首を切り裂かれていました…

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あきゅろす。
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