誰かに聞いた怖い話
・・・退院9
.
友人達と私は、それぞれの趣味も趣向も家柄も異なりましたが、たった一つだけ同じ事が有りました

それは、皆で集まった時には安いビールや発泡酒と、手頃な価格の焼酎やウイスキー、それに仲間の持っている煙草を、銘柄など気にせず分け合う事

お酒の種類や煙草の銘柄に拘る事は無く、何を呑み…何を吸うのかよりも、仲間との時間をただ楽しみたい…その気持ちだけだったのです



けれども、そのどちらもが彼等との思い出の品に変わってしまいました



だからでしょうか?



私があんな夢を見たのは…?

行ってもいないキャンプ場で、仲間と楽しく酌み交わし、仲間の煙草を一本貰い、焚き火の中の燃えさしで火を着け、ゆっくりと煙をくゆらしながら…焚き火の炎の揺らめきの中で百物語を語り合う…



でも、そんな筈は無いのです



私達の乗った車は、あの場所で…

だから私は、あのキャンプ場には行って無いのです



夢なのです



夢としか、言い様が無いのです

あの事故の衝撃か、事故の後で冷たい雨に打たれ、低体温症に陥って死線を越えた時に見た悪夢なのか…



私はその日、宿泊する筈だったキャンプ場には、絶対に行ってはいないのです

[前頁へ][次頁へ]

58/67ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!