誰かに聞いた怖い話
・・・退院9
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友人達と私は、それぞれの趣味も趣向も家柄も異なりましたが、たった一つだけ同じ事が有りました
それは、皆で集まった時には安いビールや発泡酒と、手頃な価格の焼酎やウイスキー、それに仲間の持っている煙草を、銘柄など気にせず分け合う事
お酒の種類や煙草の銘柄に拘る事は無く、何を呑み…何を吸うのかよりも、仲間との時間をただ楽しみたい…その気持ちだけだったのです
けれども、そのどちらもが彼等との思い出の品に変わってしまいました
だからでしょうか?
私があんな夢を見たのは…?
行ってもいないキャンプ場で、仲間と楽しく酌み交わし、仲間の煙草を一本貰い、焚き火の中の燃えさしで火を着け、ゆっくりと煙をくゆらしながら…焚き火の炎の揺らめきの中で百物語を語り合う…
でも、そんな筈は無いのです
私達の乗った車は、あの場所で…
だから私は、あのキャンプ場には行って無いのです
夢なのです
夢としか、言い様が無いのです
あの事故の衝撃か、事故の後で冷たい雨に打たれ、低体温症に陥って死線を越えた時に見た悪夢なのか…
私はその日、宿泊する筈だったキャンプ場には、絶対に行ってはいないのです
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