誰かに聞いた怖い話
・・・退院6
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私は窓から覗くその青空を眺め、ずっと考えていた事があるのです



それは…私が此の病院を退院する事が出来たなら、真っ先にあの場所に連れて行って貰おうと、そう考え続けていたのです



勿論そこは、あの場所でした

私達が事故に遭った、あの場所だったのです



でも…私は怖かった…



その場所を、再び訪れるのが怖かった

何か良くない事が、私の身に訪れる様な…そんな気がして、私は怖かったのです



けれども私は、その現実から逃げる事が出来ませんでした

いいえ!逃げてはイケないのです!



たった一人生き残った者として、私は彼等の御霊を慰め彼等の最期の願いを果たし、そして彼等が成仏出来る様に、力を尽くさなければならないのでした





『大丈夫ですか?』



私が此の言葉を聞くのは、もう何度目の事だろうか?



私は病院の前の駐車場迄、私の事を迎えに来てくれた彼の車の助手席に座り、あのキャンプ場へ向かう道すがらの景色を、ただぼんやりと眺めていたのです



そこは確かに、以前通った道でした



私の記憶がそう告げていました

それは勿論当たり前の事でしたが、私ははっきりと覚えているのです

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あきゅろす。
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