誰かに聞いた怖い話
・・・退院2
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私はその事実を、後輩から聞いたのです

そうです、あの日一緒の車に乗り合わせ事故に遭った、サーフィン好きな彼…私の数少ない友人の一人の、その彼の弟からです



もっとも、私が彼からその話を聞いたのは、私が生死の境を乗り越え、集中治療室から個室へと移された後の事でした

その当初、私は命の危機を脱してはいたものの、まだ意識は戻ってはおらず、昏々と眠りについていたそうで…私は兄の葬儀を終えた後、毎日の様に見舞いに来てくれていた後輩の存在も知らず、ただ静かに眠りについていたのです

そう…静かに深い眠りに…



もっとも、私の急を聞いて駆け付けた親達や、本家から私の付き添いの為に送られた親類の姉さま達の話では、点滴の針の刺さったままの両腕を天井に向かって差し上げ、まるで何かを手探りで探し出そうとするかの様な仕草を時折していた様です



私は何も知りませんでした

意識が戻った後も、私には誰も話してはくれなかったのです

勿論それは、私の身を案じての事でした

いくら外傷は余り無いとは言っても、一時は意識不明で生死の境を彷徨い、面会謝絶だったのです

それは当然無理からぬ事だったと、私も理解はしています

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あきゅろす。
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