誰かに聞いた怖い話
98話…退院
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今日は私の退院する日…
私一人が…退院する日…
私が運び込まれた此の病院で目を覚ましたのは、事故から一週間も経った頃でした
私はその間、意識不明の状態で、一時は命の危険すらあったと言う事を、意識が戻った後で病院関係者から聞いたのです
私は覚醒した後も、直ぐに退院する事は出来ませんでした
それは…私の怪我はさほどでは有りませんでしたが、私の精神が不安定で、とてもの事では普通の生活を送る事など出来そうに無かったからです
そうかと言って、私が天涯孤独の身の上と言う訳では有りません
私には歴とした両親と、私を小さな頃より慈しんでくれた育ての親がおりました
私の育ったその家は、その地に累々と続く旧家で、特別な生業を平安の昔より続ける一族の長の屋敷でした
私は生まれ持ったその力の片鱗を、本家の者に見出だされ、養子として育てられる事になったのです
ですから、私には名字の同じ両親が二組存在しました
けれども、私が退院する今日此の日、私はその家族達にも家人達にも、私を迎えに来る事を禁じました
勿論それには理由があったのです
あの事故で生き残ったのは…私一人切りでした
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