誰かに聞いた怖い話
・・・目覚め8
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『…』
私は病室のベットに横たわり、開け放たれた窓を横切る白い雲を眺めていました
その白い病室の壁に描かれた青い空に浮かぶ雲は、切り絵の様に真っ青な空を白く切り抜き、まるで生き物の様に刻一刻と姿を変えつつ、右から左へと流れて行ったのです
『…』
私はさっきから首を左に傾げたまま、その空と雲だけをぼんやりと見つめ続けていたのです
見舞い客も帰り、私一人しか居ない病室のベットの上で…
私が此の病院に運ばれて来てから、既に半月余りの時が流れていました
あの夜、私は仲間と一緒にキャンプ場へと向かう途中、事故に遭ったのです
あのカーブを曲がり始めた途端、道路を不意に横切った動物…多分大きさからして狐か野良犬か…そのくらいの大きさの獣だった事は間違いないのですが…その体毛の色が茶色だった事を、車の運転をしていなかった私も、チラリと見て覚えていました
そして私が激しい揺れの中で目撃したモノは、私の乗って居た友人の運転する自動車が道路を外れ、急な斜面の灌木をなぎ倒しながら滑り墜ちる…そんな恐ろしい光景だったのです
そしてそのまま気を失った私は、友人の弟によって発見されました
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