誰かに聞いた怖い話
・・・目覚め6
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私は夢を見ていた…



長い長い…夢を見ていた



私が見続けるその夢は、とても不思議な夢だったのです



そこには明るく眩い光を降り注ぐ太陽も、全てを覆い尽くす真っ暗な暗闇も無い、とても…とても不思議な世界だった

私の立ち尽くす場所には、辺り一面に真っ白な霧が漂い、前に差し出された自分の両手さえ、乳白色の濃い霧に邪魔されて、うっすらとしか見えませんでした



私の名を呼ぶ聞き覚えのある誰かの声で、あの暗闇の世界を後にした私ですが…

再び瞼を開けた時には、此の不思議な世界にたった一人っきりで立ち尽くして居たのです



けれども私は、今度はうろうろと歩き回ろうとはしませんでした

それは…私の本能がそうさせていたのですが、以前の暗闇の中に独りぼっちだった時とは大きく違い、何故だか分かりませんが…何処か安心出来る様な、そんな気がして…

私はその場に止どまりました





どのくらいの刻が過ぎ去ったのでしょうか?



いつしか私はその場に腰を下ろし、立てた両膝を両の腕で抱え、額を膝に押し当てる格好で、じっとその時を待ちました

誰かが、私を迎えに来てくれる時を…

私が本当に目覚めるその時を…

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あきゅろす。
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