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DREAM
《光》土方
俺の世界は真っ暗で

何も見えない。



「蓮、お前もすげーなぁ!目が見えないのによく殺せるぜ…」
「いえ…、慣れれば…何も問題無いです。」

刀についた血を振り払い、鞘に収める。
顔に飛び散った血は、拭っても拭っても落ちないような気がした。

幼い頃両親は殺され、人買いに買われ毎日毎日虐待を受けた。

目が見えなくなったのも、そのせいだ。

《弱いから負ける》

それが、日常から見出した真実だった。
それから俺は、毎日腕を磨き、強くなった。
二度と弱者には戻らない、と。


ふと昔のことを思い出してしまい、両目がズキズキと痛んだ。

「帰りましょう…あまり長居をすると……」

そう言いかけた時…

「てめーら、そこで何やってる。」

「チッ!真選組副長…土方十四郎か…!」
「土方…十四郎…。」

名前は知っていたが、まさか対峙することになるとは思ってもいなかった。

「おい蓮!こいつは一筋縄じゃいかねぇ!!退くぞ!!!」
「隊長、俺がこの場を食い止めます。」
「大丈夫なのか…?」
「はい。」
「わかった、頼んだぞ。」


「ん…?」
土方はどこか見覚えのあるその顔を見て、記憶を辿る。

「あの顔……」

蓮は刀を抜き、間合いを取る。

「土方十四郎…いざ尋常に、勝負。」
「威勢が良いじゃねぇか…受けて立つぜ。」





___…馬鹿だった。
強くなったと思っていたのに、何も変わってはいなかった。

喉元に突きつけられた刀は、確実に俺の死を捉えていた。

「殺せば…いいじゃないですか…」
「…怖くねーのか。」
「怖くなんか……」
「あの時も、そう言ったな。蓮。」
「なんで、俺の名前…!」
「人買いから助けてやったろ。」
「あ……」

そうだ、あの時…

「すみません…俺…目が…」
「分かってる。」
「止めを…刺さないんですか…?」
「刺してもいいが、どうする?」
「俺はもう…戦う気は無いです…殺すなら…」
「そうか、じゃあ真選組に来い。」
「えっ…?」
「お前には俺が処罰を与える。んで、今日から真選組だ。」
「あ…はい…」
「立てるか?」
「ええ…大丈夫です…」

手を引っ張り、起こしてくれる土方。


『立てるか?』
『うん…』


蓮の頭の中に浮かぶあの記憶の残像


「土方さん…」
「あ?」
「二度も…助けてくれるんですね…。」
「まぁな。」
「ありがとうございます…。」

でも、今まで斬ってきた数は計り知れない。
自分だけが助かるなんて…

「俺…たくさんの人を殺しました。そんな人間が…」
「じゃあ残りの人生全部使って、この世界の人間全員幸せにしろよ。」
「……頑張ります…。」


「…」
土方は不安そうな顔の蓮を見て、煙草をふかした。


『僕、またお兄ちゃんに会えるかな…』
『じゃあ、次に会った時に分かるように、合言葉でも決めとくか。』



「あっ…」
蓮は何かを思い出したように土方の顔を見る



「「笑え。」」



二人の声が重なり、お互いに吹き出す。

「今思うと、変な合言葉ですね」
「ガキだったからな…」


『笑え、そしたら生きていける。なんとかなる。』
『うん…頑張る…』



「俺、土方さんの隣で笑っていてもいいですか?」
「…好きにしろ。」


真っ暗だった世界に光が差した気がする。

また、あなたが手を伸ばしてくれたから。

俺は、生きていこうと思う。









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