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勇者ものがたり
なんだか変わった村に来たみたいです



「ようこそ!ここはネオピトのむ…ら……、
・・・・・・・・・・・」




ふわりと、


風が舞った気がした。









村の入り口に立ち、もう何百回も言っただろうそのお決まりの言葉に、
目の前の柔らかくプラチナゴールドに輝く瞳が、案内人へと向けられる。


その瞬間、強い衝撃が胸を貫いた。


――――――……「ご苦労様です。」


にこりと春のような暖かさを纏った笑顔。

凛として高い、どこまでも透き通ったボーイソプラノの声が、案内人の耳を震わせると共に、案内人の体温が徐々に上がっていく





その日

“村の入り口に立ってただ村の紹介をするだけの簡単なお仕事!”という文句に騙されてうっかり面接を受けた(ことを絶賛後悔中だった)案内人Aは、




その時、

ただぽかりと大きく口を開けたまま、目の前を通り過ぎる少年を見つめた。






後に案内人Aは語る。
“おとぎ話のような光の天使が、今まさにそこに居た”と












「これが1000年後の世界かあ…」


1000年って言っても、大して変わってないように見えるけどなあ。

どこをどう見てもそれっぽいものが見当たらないし、道行く人を見ても、いかにも普通、と言った言葉が当てはまる。



しいて言うなら、さっきから何故か視線が痛いってのはあるけど、まあこの髪と瞳だし、目立つのはそのせいだろう。


「いらっしゃい!いらっしゃい!お、そこのあんた!うちの商品は…う…うおおおおおおおお!」

「安いよ安いよ!今朝入荷した新鮮な野菜とお肉だよ!おやそこの坊ちゃん!このフルーツ、ひとつ味見はどう……ふああああああああああああ!」

「すみません、道を聞きた…ひゃあああああああ!」

「おい、天使って存在したのか…?」

「いや待て、幻覚かもしれないぞ…?油断するな」

「しかし今日は神聖な日なんだ、天使くらいいてもおかしくないだろう」

「なるほど」




ええっと、武器+防具屋、道具屋、あそこは小さいけど宿屋かな…?最低限のものはあるみたいだ。
文字も多少読みづらいが、読めない事もない。
通り過ぎる人の声も、ちゃんと理解できる。

なんとなく聞こえてくる内容がおかしい気がしなくもないが、これがこの時代の普通なのかもしれない。
なんか語尾に奇声をあげるのもそういう方言なのかもしれない。
そこらへんはさすが1000年後だな。


お、あれは魔法具店…?そんなのもあるのか。へー


あ、そういえばこの時代で俺の持ってる金って使えるのか?うーん、いざとなったら、どこかで持ち物を換金する必要があるな。


「いよいよね!」
「そうね、今回はどうなるだろうねえ」
「うちの国が勝つに決まってるじゃない!」
「そうしたら、我が家もだいぶ助かるんだけどねえ。」
「ほんと。ねえ、もしかしたら、この村の誰かが…ってこともあるんじゃない?」
「あらあらどうしよう!そうしたら本当に目出度いわあ、盛大にお祝いしなくちゃ!」



村の人間はどこか浮き足立っているようだ。

今日は何か行事でもあるんだろうか…?




「ん・・・?」



ふと見慣れない看板の文字が目に入る。



「ギルド…?」






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あきゅろす。
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