勇者ものがたり
精霊魔法とは
この世には大きく分けて2種類の『魔法』が存在する。
まず『通常魔法』
この世界の理に沿った公式――“呪文”と呼ばれるそれを、生き物が持つ純粋な精神の力――“魔力”によって上位次元に届かせ書き込むことで、
この【世界の理】にほんの僅かだが一定の結果、影響を起こすもの。
例えば何もない所に火を熾したり、水を生み出したり
これが、通常多くの人間や種族に使われている『魔法』だ
ところがこの【世界の理】とかいうもの
神の作った設計図とルール(理)があったとして
それをこの世界で実際に担い形作るのがいま俺の周りにふわふわと集うこの“精霊”達だったりする。
故に精霊自身と意志を交わせることができれば、呪文や魔力を使わずとも、枯れた草木は生き返り、厚い雲に覆われた空もあっという間に晴れ渡る。
それが『精霊魔法』。
精霊に意志を伝え、深く同調することによって、理を動かす魔法。
やろうと思えば何度でも魔法を実行することが出来るわけだが、
本来なら世界の成り立ちに関わる精霊王やその上位存在のみに許された領域のこの魔法
精霊と同調(リンク)し続ける尋常ならざる集中力は基本として、
それが下級魔法レベルならまだしも
例えば広範囲高威力の上級魔法レベルのものを精霊魔法で再現しようとなれば、
それこそこの世界のあちらこちらの精霊から流れてくる膨大な情報をもとに、これまた気が狂いそうなほど隅々まで考えられた緻密な理の設計、組み立て、そしてそれを精霊に伝え実行させる想像(創造)力が要求されるわけで
いい加減な想像をしようものなら、望む半分の結果も得ることができない。
正直めちゃくちゃめんどくさい。魔力ではなく気力が削られるとでもいうのだろうか、消費しているものはないはずなのだが、やはり疲れるものは疲れる。
まあ上級レベルなんぞ滅多にやらないし、基本である精霊との同調は生まれてから今まで精霊の森で過ごしてきた中でもはや無意識レベルで行うことが出来るので
なんだかんだいいつつ俺にとっては通常魔法と比べれば遥かに楽なチート魔法なわけだが
うーん、実際やってみればわかるだろうか。
例えばだ
(あーおなかすいたなあ)
と心の中で呟いてみるテスト。
カカカッ!!!!
――――どさささささささっ!!!!!!
『ゆしあ!』
『ごはん』
『たべてー』
『おいし!』
『ゆしあー』
『えらい?』
『ゆしあ』
『ほめる?』
お分かりいただけただろうか?
今、俺の前に軽く2、3メートルは積み上がったこの果実やら肉やら野菜の山…っておいおい 生きてるお魚さんまでいるじゃないか可哀そ…ちょ、魚人までいるwwwwww
…すぐに水の中に返してきなさい。
うんうん、いい子いい子。
しかし、凄い量だな…。きちんと内容をイメージしてなかったせいかもしれないけど。精霊たち…いくらなんでも…
え?何?久々だったから張り切った?久々って、ついこの間まで魔物達と戦闘してたし、それ以外にもお前たちとは意志疎通してたろ…?
あれ、でも俺いつの間にか眠ってたんだっけ、
…もしかして何日か経ってるのかな?
魔王の気配も消えてるし、記憶はないけど、俺、魔王を倒したのかなあ。
それで力使い果たして眠っちゃったとか?
だとしたら、俺はどのくらい寝てたんだろう。
ん?精霊たち、どうした?
ん?1000年?
……。
何が?
え?俺が寝てた時間…?
………え。
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