勇者ものがたり
え?何?俺の時代終了のお知らせ?
気が付いたらこのお花畑に寝ていたわけだが、
とりあえず俺は昨晩の記憶を掘り下げてみることにした。
しかしどんなに必死に思い出そうとしても、これっぽっちもここで目覚める前のことを思い出せない。
「うーん・・・」
なんとか辿れる一番新しい記憶は
たしか、知り合いの竜神に会いにいったことだ。
竜は基本的に人間に興味がない。それが逆に過剰すぎる人や一部の亜人からの干渉を鬱陶しく思っていた俺自身にはむしろ有難く、何より楽でいられ、たまに会いに行ってはお互い他愛のない話をしていた。
そしてそろそろ次の町へと行こうかと考えていたところで、竜神が言ったのだ。
『勇者殿、もう良いのではないか?』
と。
その言葉につられて俺がついつい見てしまったそれは、
真上に広がるあの深紅色の綺麗な空
紅い空は
魔王の力の深い浸透を示している
「俺は・・・」
それからどうしたっけ・・・?
・・・
まさかと思うが、その足で魔王のいる城へ向かった?
この俺が?そんな面倒なことを?
あーでも、そういえば向かったような気がする。さすがにこれ以上後から後へと引き延ばすのは無理かなと思って
それで確か
手当たり次第に敵を倒して、
魔王城最奥の扉をーーー開けた。
「ああそうだ」
・・・うん、開けた。ここまでは覚えている。
それから俺は・・・
たぶん魔王に会ったはずなんだが
ええっと、どうしたんだっけ?
ふと違和感を覚えて俺は視線を上げた。
「?」
相変らず幻想的な風景だが、何かがおかしい。
「あ……そっか、空が青いんだ。
……
………
…………えっ?」
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