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勇者ものがたり
取り調べか…懐かしいな…とか考えてました





―――ネオピトの村




ギルドにて事前に決められた各村ごとの事項をギルドマスターと照らし合わせ確認したのち、先に派遣されていた部下からの報告を受ける。


このギルドは先日、謎の爆発により建物自体が半壊したため急遽隣村のドワーフ族によって建て直されるという事があった。
何者かによる勇者選抜試験の妨害の可能性もあるため、部下にも村の調査をさせていたはずなのだが

奇妙な事にどの村人も「天使が…」「神の怒りが…」と訳の分からない証言をし、皆一様にその原因であるらしい被害者を非難する。


被害にあったという者も元々評判の良くないならず者の男が一人であり、それも既に回復している。目撃者の証言、また状況から勇者選抜の妨害を狙ったものではないとして、早々に不可解な事故として調査を終えることとなってしまった。







「天使…か。」


現場にいたという天使だか精霊様だか知らないが、とても信じられたものではない。
こういう話はむしろレインあたりが喜びそうなものだが

と、ギルドを出てふとクレイグは見慣れた空色の髪がないことに気付き頭を抱えた。

「レインはどうしたんだ…。」
「え、レインさんですか、それがその、つい今しがた…」

訊ねられた部下が気まずそうに答える

「またか…、全くあいつは…」

口で言って分かるやつではないという事は、ここ数年の付き合いで知っている
また問題事かと思わず胃が痛くなり始めたところで






「なああんた!あの有名な赤の騎士様だろう!!?」

「…?」


「なあ聞いてくれよ、俺達ぁひでえ目にあったんだぜ?!」
「危うく死ぬとこだったんだ!すげえでけえ魔物さ!見たこともないようなのに襲われて命からがらなんとか逃げてきてよ」
「それもこれも全部あのガキのせいなんだ!」



「…おいお前達、何をしている。下がれ。」


突然、不躾にも話しかけてきた男達に、空気が凍り、部下達が顔を引き攣らせながら下がらせようとする。

が、それを手で制し止めた。


「詳しく話を聞かせてもらおうか。」









―――





ギルドの一室、客室として用意された部屋に赤い騎士と二人の少年が向かい合い座っていた。
部屋の周囲には警護のため数人立たせている。



今、この部屋は異様な雰囲気に包まれていた。



件の少年の隣に悠々と足を組んで椅子に座りそしらぬ顔で窓越しの外の景色を見るユシアという少年。

何処から見ても普通の少年だろうに、何故か異常なまでの威圧感を感じる。

ふと目が合うとにこりと微笑み、その瞬間クレイグの背中をうっすらと冷や汗が伝った。

気のせいか…?いや、だがこんな少年がまさか



「あの…それで、話と言うのは。」

トウマ・ユリウスという少年の言葉により、いくらか空気が和らぎ、クレイグは気を取り戻す


「あ、ああ、すまない。そうだったな。

まず初めに言っておくが、我々も何も彼らの話を鵜呑みにしている訳ではないんだ。
ただ、一つ気になる点があってな、君にも確認しておきたい。」

「それは…。」

「彼らの話では、薬草採集のクエストをしていた時に見たことも無い魔物が現れたらしいんだが、君もそれを見たか?

もし見たのなら、出来るだけその魔物について詳しく教えてほしい。」

「それは、いいですけど。でもどうしてですか?あの魔物が何か…?」

「そうか、そこも君達には教えておいた方が良いのか…。

・・・君達は、今、この世界各地の魔物が以前より強さを増してきているという話を噂でも耳にしたことがあるだろうか?

あれはな、事実だ。」


「えっ、そ、それって…」

そこでふとユシアという少年がこちらを見た。
驚き戸惑うトウマ・ユリウスを横から見つつ、

まあしょうがないと、いったように口を開いた

「そんな情報、俺達に教えてくれてもいいのか?騎士のお兄さん?」

言外に余計なしがらみはよこすんじゃねーぞと、こっそり込めつつ、表面上はにこりと笑顔でそう問うている。

一瞬驚いたクレイグだが、

「心配しなくていい、元々この件に関しては、国としても徐々に国民には知らせていくつもりだ。
だが、知らせるにも、元々こちらの得ている情報も少ないのが現状だ。


原因は、おそらく今代魔王の影響だろうと言われているが

実際、同じ場所で遭遇した魔物であっても、この数年でレベルが10も20も違っていたり、
本来なら奥地にいるべき魔物が前線まで出てきたりしている。

そのせいで既に勇者選抜の参加者で脱落する者も出始めているようだ。


そして魔物の凶暴化も各地で報告されているんだが、
中でも、未知の魔物を見たという証言がこのところ多く挙げられていてな、だがほとんど一般の者によるもので実際の魔物をこちらで確認できた例がない。」



「じゃああの魔物が、その一つかもしれないと?」


トウマという少年が訝しげにこちらに問うた。
その隣に座るユシアという少年は再び興味なさそうに、ただ黙って話を聞きながら、紅茶を飲んでいる。何を考えているのか全く読めない


「そうだ。だから君達には出来れば…「せんぱーい!」

「お土産買ってきました!取り調べといったらおやつですよね!これ、マジで美味いですよ!」



ドーン!という音と共に扉が開き、レインが飛び込んできた














その瞬間、

ユシアという少年が茶を吹き出した。

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あきゅろす。
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