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勇者ものがたり
将来の夢は神(笑)ふるぼっこです

困ったな。


精霊や精霊魔法のことは他人に知られるわけにはいかない。それは絶対だ。

人のエゴや欲の醜さなら何度だって見てきているし、
意味のない争いに巻き込まれるのはユシアとてもうこりごりだった。



だが、何やらしょんぼりとしたり、頭を撫でれば戸惑いながら微かに喜びを表すトウマを見ていると、どうも放っておけないというか

何だろう…。精霊たちとは違うが、あえていうなら森の動物達を相手にしていた時のような感じと言うか

うん。

ついつい優しく接してしまうユシアがいた。






そして何故だかふとこちらをじーっと見つめてくるトウマに、
ユシアは内心、まさか俺自身にかけてる精霊魔法まで見破られてるんじゃと冷や汗をかきつつ、
さほど気にするようなそぶりを見せないようにトウマに怪我の経緯を問いかけた。




「それは…、えっと、一人で森に入ったわけじゃないんだよ。本当は仲間が5人いたんだけれどね…。

薬草採集のクエストに見たことも無い魔物が現れたんだ。
みんなは逃げ出せたけど、
僕は、その、うっかり逃げ遅れて…」

「ふーん、逃げ遅れて…な。」

うん、微妙に嘘だな。すげえ分かりやすい

パーティを組んでおきながらよりにもよって新人のこいつを置いて逃げるとは、その仲間とやらの顔を是非とも見てみたいものだが。


「…もしかしたら、僕の所為で魔物が現れたのかもしれないんだ」

「…?」

「黙っていてごめんねユシア。僕も君に先に言っておかなきゃいけない事があったんだ。
気持ち悪いかもしれないけど、僕は、どうやら生まれた時から神様に呪われているらしいんだ」




はい?




「呪い?」

つい聞き返してしまう。
呪われているとはこれいかに

見たとこ呪術っていうなら黒の精霊あたりが湧いてくるはずだが、別に身体のどこにも纏ってるわけでもないし、
呪いと言われても何のことだか…

ん?

「“神様”?」


あれ、なんだろうとっても不愉快な単語だぞ☆



「うん…、僕の村では生まれた時に『春の国』の教会で神父様から祝福を受けるんだけど、その時、僕だけはどうしてもその祝福の力を受け入れることが出来なかったんだ。
祝福だけじゃない、教会の神聖魔法自体が僕には効かないみたいで…。」


「ふむふむ。」


まあ、精霊魔法が効かないこいつならおそらくその神聖魔法…っていうか、おそらく俺の時代でいう“白魔法”の事だろうけど、

そりゃ無意味だろうな。

というか、こっちでは白魔法が神からの魔法っぽい扱いなのか
まあ確かにこいつに通常の魔法が効かないようにしてるのはその神とやらだろうから、ある意味それは神の呪いともいえるが。


「それに、何故か僕は昔から魔物を引き寄せてしまうみたいで…。今までも何度も襲われているんだ。村の人に怪我をさせてしまったこともある。両親も…」

「……。」

「気持ち悪いかな。どうにも僕自身が昔から不幸を呼び込んでいるみたいだって村の人には言われるけど、
でも確かに、僕が何かをしようとすると必ず何か事故や事件が起こるんだ。

それも僕だけが死にかけたりするならまだしも、それ以上に周りを巻き込んでしまうから、僕自身、どうしたらいいのか分からなくて

もうずっと、なるべく家で過ごすようにしていたんだけど…」

「……そうか。」


何だか面倒なことになってるな。

魔物の事といい、

不幸を呼び込むってのはどういうことだ?
精霊魔法が効かない以外にも何か原因があるって事なのか…?



うーん、
何だろうだんだん考えれば考えるほどムカムカしてきたぞ。
というか何もかもあれ(神)が関わってそうなのが気に食わない。

つまりだ、あれ(神)をぶっとばせばいいのかな?かな?

え?違う?



「でも、いつまでもそのままでいる訳にはいかないと思ったんだ。だからこそ今回の勇者選抜にも参加したんだけれど…

ああごめんユシア。助けてもらったのに、これ以上君にまで迷惑をかけるわけにはいかない。

僕はすぐにここを出て村まで帰るよ。」

そう言ってすくりと立ち上がりトウマは身支度を始め出ていこうとする。
それを俺は引き留める様にその服の端を掴み、見上げて問い掛けた。

「一人でか?また魔物に襲われたらどうするんだ?」

「それは…。」

「悪いけど、俺、神ってやつをほとんど信仰してないんだ。
だからお前の呪いってのも俺には関係ないと思ってる。

いいか、一人で行こうとするな。お前が村まで行くなら俺も付いていく。」


このまま一人で行かせたらどうなるかなんて分かりきった事だからな。

拒否の言葉は許さんとしっかりと目を見ながらトウマに言えば、トウマはしばし呆けた後、僅かに赤くなって、狼狽え目を彷徨わせる


「ま、待って。
僕と行くと何があるか分からないんだ。現にあの見たことも無い魔物に襲われたし、君を巻き込むわけには…

それに危ないよ、君は武器だって持っていないよね?
もし魔物が襲ってきたら」


と、なんとか俺を止めようとするが無駄だ。
俺を誰だと思っている


「武器ならある。」


「え?」

俺は立ち上がり、徐にそれを差し出した。



「これだ」



俺の相棒、もとい木の棒さんだ!



「……。」

「……。」



何か文句が?



「え、えっと。と、とりあえず僕が先頭に立つよ。…いいかな?」


何故かトウマがものすごく複雑そうな顔をしてそう言った。

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あきゅろす。
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