勇者ものがたり
魔法なんてカスみたいなものですが
突然だが、ユシアは魔法が苦手だ。
え?と思うだろうか
だがよく考えてみてくれ。所詮俺は「 勇者 」なのだ。
本来なら
魔法?何それ美味しいの?
な生き物なのだ。
壁?魔法なんぞ使わなくても素手でぶちこわせばいいよね?
海?気合で割れるよね?
山?拳で殴れば簡単に抉れるよね?()
火?軽く擦れば一瞬で起こせるよね?
水?試しに地面割れば出てくるんじゃない?
風?何?起こして欲しいの?ちょっと待って今からそこの大木抜いてくる
…というなんとも素敵な脳筋仕様となっており、
たとえステータスフルカンストしたところでMPなんぞHPと比べたら桁が3つくらい少なかったりする。
そんなユシアが使える精霊魔法以外の魔法なんて一つしかないわけで
その名も脳筋勇者専用魔法
“光魔法”
そもそも精霊魔法が駄目となると通常の魔法も無意味だし(というかユシアには元々使えない)もうこれしかないんだが、一応回復にも使えるはず。
「えーっと、“光よ集え、我が名の元に、彼の者に癒しの息吹を”……っ!」
ポワッと穏やかな光がユシアと少年を包む、それと同時にユシアの身体から一気に大量のMPが削られていき、
「っ…魔法一回で、これか…。」
白く暖かな光に包まれた少年の傷がみるみるうちに塞がっていく。
消え入りそうだったか細い呼吸も、徐々に落ち着いていった。
逆にユシアは激しい気怠さに襲われていた
「つ、つらい…。これだから魔法は…。」
ただでさえ少ないMPが危うく0になるところだ。
ともすれば前のめりに倒れそうになるのをなんとか耐え
ふ、と息を吐いて、ユシアは次の事を考え始めた。
この少年をどうするかなのだが…。
村の人間だろうか、家族がいるようならば日が沈む前には村に帰した方が良いだろう。
だがあのギルドでの悪夢(トラウマ)がある。
1000年後恐い…1000年後恐い…
「そうだ容姿を変えよう」
ぽん、と湧いて出たように言ってみる。
とりあえず、この容姿が良くない。色とか目立ちすぎるのがいけないのだ。
『やる?』
『かえる?』
「うん」
YOUやっちゃう?みたいなめちゃくちゃ軽いノリだが、旅してた頃も何度か変えたことがある。
…まあ今回は地味に黒髪黒目でいいか。
とりあえず、なるたけ人の印象に残らないようにある程度のイメージを固定してから精霊魔法で自らに実装した。
「ん…」
と、タイミングよく少年の意識が戻ったようだ。
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