企画・アンケート小説 1 修羅界―― 闘争が日常と化し、戦うことでしか存在意義を保てない世界。勝者は敗者からすべてを奪う事が許される…命でさえも――それが掟。 修羅王が鎮座する城の中でも――閃光の間。 「……フォルカ、悩みがあるのなら相談に乗ろう。」 「兄さん、俺には悩みなんて……」 ―――ない、と言おうとした唇は兄の滑らかな人差し指によって遮られる。 目の前に見えるのは、優しげな笑みを浮かべた兄の姿。弟――フォルカは、兄の前には黙っていても無駄なんだと悟り、恥ずかしいのか……視線をそらして、語る。 「その……ッ、下が、ムズムズするんだ…」 「・・・・・・・。」 「修行をしているときや、フェルナンドと手合わせしている高揚感とは違った、熱さが俺の中で、グルグル……してて、」 「フォルカ、それは―――」 答えを言おうとした兄――アルティスだったが、続けるようにフォルカがアルティスの服の裾を掴んで訴える。 その瞳が―――捨てられた子犬のようで、アルティスは思わず唾を飲み込んでしまう。 「(全く・・・この子はいつの間に、こんな瞳をするようになったんだろうね)」 「兄…さん?やっぱ、俺――間違っているのかな…フェルナンドに聞いても、答えが返ってこなかったし…」 「フェルナンドに聞いたのかい?―――他には聞いていないだろう?」 「う、うん……アリオンに声をかけられて、同じ質問したら――兄さんの所に行けっていわれて・・・」 「(後でアリオンに酒でも持っていってやるか)」 腹の中で兄の策謀が蠢く。下半身のムズムズを知らない、ある意味純真なフォルカは自分が他とは違う存在なのか・・・と不安を露にしていた。普段の彼を知るものならば、唖然とするくらい、今の彼は揺れている。 その姿を拝めるのは兄であるアルティスのみ。(そういう風に仕向けたのもこの兄の仕業なのだが) 「フォルカ……私の寝所にいなさい。すぐに私も向かうから。」 「あ、うん……」 「服もできれば脱いでおくように。」 「わ、わかった…」 フォルカを言葉巧みに自分のいいように仕向けて、寝所に向かわせる。アルティスはフォルカの後姿を見て、修羅王しか知らない彼の本性を醸し出す肉食獣の瞳を出した。 → [次へ逝って視る] |