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「お前って、簡単に殺せるんだな」



そう俺ににこにこと笑う男が言った。俺にはその意味が分からない。なぜ?王の命令は絶対だ。法律だ。背くことなどあり得ない。王に拾われたあの日から、俺の全て。あの方がそうしろと言うなら、何を迷うか。


猫っ毛のふわふわした髪が揺れる。190センチある自分から見ると彼の頭のつむじまでよく見えた。


それがこちらを振り向く。


「なぁ、ダイキ。おまえはさー自分の親も殺せと言われたら、殺すの?」


親。こくん、と頷く。顔も知らないので、他人となにも変わらない。


「仲間も?」


「命令ならば」


王に命令されたのならば。それが、


「俺のことも、殺す?」


茶色い瞳が歪む。彼はふふ、と笑いながら俺から離れていった。


王直属の暗殺部隊として俺たちは同じ隊にいた。彼−トキは部隊長でありながら軟派な性格でふらりふらりとする、まるで猫のようだった。


王に拾って頂いたあの日、部屋にいたのは彼だった。


『やぁ、ダイキ。俺はトキだよ』


そのときはまだトキの方が身長が高くて、俺はいつもトキを見上げていた。いつも笑顔で、優しくって。俺が訓練や任務で失敗したとき、俺をベッドの中にいつも入れてくれて、頭をなでてくれた。



(王の、命令、)


だったら、どうする?




そんなこと、考えたこともなかった。

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