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夜も更けた時間。人の気配を感じて襖を開けると縁側に清人が座っていた。僕が家に帰った時清人は出ているようで姿を見なかった。



「おかえりなさい。清人。」




「・・・盟。」



清人は振り返らない。




「清人?」




「私はダメな夫ですね。兄達にも義姉達にも怒られましたよ。私は任されたばかりの仕事にかまけて、貴方の不安にも気づかず貴方を追い込んでしまった。」


清人の言葉に思わず驚く。そんなことない。清人は務めを果たそうとしていただけ。必死に時間を作って会いに来てくれたじゃないか。


「そして白木にうばわれるんじゃないかと恐れている。子どもだと、笑いますか?」



「笑わないよ」



清人の肩に手をかける。そっと、清人はそれに手を重ねた。清人はまだ19歳。日条では18歳で成人とみなされるが、それでも。




「笑ったりしないよ。君は僕の唯一の旦那様だ。僕の方こそ、泣き言ばかりでごめんなさい。」



「盟」



振り向いた清人は僕の唇にキスをくれた。優しく、触れるキス。清人の唇は少しカサついていた。


「2人で、乗り越えていこう。私と、貴方。私は貴方の愛を信じ、貴方は私の愛を信じて。貴方がどんなに悩んでも辛く寂しくても、貴方は私に愛されているのをどうか忘れないで。貴方は決して1人になることはないのです。」



優しい、ことば。
心に染み渡る。



ああ、そうだ。



暗い部屋の、襖はとっくに開いていた。



僕の周りにはたくさんの人で溢れていた。




僕は、孤独じゃない。




涙が、溢れる。それが清人の肩を濡らしていく。それに気がついた清人は僕を優しく抱きしめてくれた。




「愛してますよ、盟」




「うん、僕も」




彼の愛があれば、僕はもう、迷うことはないだろう。また、壁にぶつかることは、あるかもしれない。でも、大丈夫。清人が、いるから。最愛の人がいるから。




「愛してる」






ーーーーーーーーーーー





「あうー!あう!」



「わ、華清、」



久しぶりの我が子は少し大きく、重たくなった気がした。僕の腕の中でにこにこ笑っている。



「やはり、母様の腕の中が好きなんですねぇ。清人様が抱っこされた時はもう泣かれて泣かれて」



女中が笑う。清人は少しムッとした顔をしていて、それがおかしかった。


「華清は、君にそっくりだよ」


「私に?」



顔立ちはもちろんだけれど。




「僕のことが大好きなところ」




そういうと清人は顔を真っ赤にしていた。それがひどく可愛くて。女中がそばで、まぁまぁと笑っていた。




華清、君にもいつか現れるだろうか。
僕が清人にあったように。


唯一無二の存在に、出会うのだろうか。



出会えたらいい。




それは、とても幸福なことだと、母はしっているからね。



終わり

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