小説 プロローグ 一人の女子高生が、ヘッドホンを聞きながら歩いていた。 鼻歌を歌い、夕暮れの薄暗がりな道を進む。 ――――そういえば、最近ここらに不審者が出ると聞いていた様な気もした。 だが、所詮は都会。 通行量も多いし、人も沢山歩いている… …筈だったのだ。 「それにしても、…何でアタシ以外の人が見当たらないの…?」 歩道を渡るときの、あの音も虚しく響く。 車は一台も通らない。辺りを見回しても、人影が見当たらない。 少しの恐怖を感じた少女は、恐る恐る背後を振り向く。 ―――――そこに、いたのは。 声を出す事も無く、虚ろな目でこちらを見上げる子供。 青白い手をした、真っ白な子供。 幽霊ではないのか、と疑問が浮かぶももう遅い。 腹部に走る強烈な痛みと、反転する視界の中で少女は小さく言った。 『アタシなんて、死ねばいいのに生きてるから人を殺すんでしょう…』 その意味など、自分でも理解できない。 それでも、死と言う単語に妙な安心感を覚えた。 [次へ#] [戻る] |