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最強伝説
「タッちゃんて可愛い男の子好きなのにキィスは狙わないんだな」

 櫻が唐突に呟く。その場にいた全員、キィスを除いたキメラ、丙、そしてタツヤの三人の視線が櫻に集中した。

「……お前いきなり何言っとんねん」
「いや、ふと思ったもんだからさ」
「スキンシップは過剰じゃないか?」
「でもそれだけじゃん」
「キィちゃんは可愛いんだけどねー……」
「だけど?」

 櫻に向けられていた皆の視線がタツヤに移り、タツヤはもったいぶったように間を置いてから口を開く。

「あれ人工でしょ?」

 真顔でいうタツヤに視線が集中する。困ったように溜め息をつき表情を曇らせていた。意味不明なその言葉に、誰もが顔中疑問符で溢れかえっているようだった。

「俺はあくまでも天然のかわいこちゃんが好きなの。計算高い子はちょっと苦手」

 補足するように言葉を続ける。そして締め切られていたドアを少し開け、皆に外を見るように促した。訳もわからないままそれに続き、四人は顔だけを廊下に覗かせる。すると何やら言い争う声が聞こえてきた。それはとてもよく聞き慣れた声で。

「……だからさ。普通よりプリント少ないんだからもうちょっと安くできるんじゃない? 最初に言ったよね。できるだけお手頃価格のグッズ作りたいってさ。俺だったらTシャツに四千も五千も出したくないの。もう少し安くできればすごいファンってわけでもない子でも買ってくれるかもしれないじゃん。そしたら結果的に売上アップで万々歳でしょ。今の段階だとどう考えても赤字なわけ。足元見てるつもりなら別に良いですよ、他の所に頼むから。悪い噂とか流れちゃっても知らないよ〜?」

 携帯電話片手に値段交渉するキィスの後ろ姿はとても頼もしく見えた。しかし四人は見てはいけないものを見てしまったかのような罪悪感を抱えながらゆっくりとドアを閉めたのだった。



「あっ、みんな〜! 聞いて聞いて、さっき電話があってね、業者さんちょっと割引きしてくれるって。良かったね、コスト削減! なんちゃって」

 数分後、輝かしい笑顔で帰ってきたキィスに、皆精一杯の苦笑いを返すことしかできなかった。





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キィちゃん守銭奴疑惑!


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あきゅろす。
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