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いじめられっこ同盟
20
 あいつらに反抗して調子に乗っているのか、俺は負けじと言い返した。
 裕次郎は軽く舌を出しただけでそれ以上反論せず、その口許には笑みが浮かんでいた。

「よっし! ラン、ユウ、今日ゲーセン行こうぜ、ゲーセン」

 勢い良く立ち上がって俺は叫ぶ。

「ちょっと、何それ。一昔前のアイドルみたいな呼び方やめてくれる?」
「いちごちゃんだって同じようなもんじゃん」
「はあ!? いちごちゃんのこと馬鹿にしたらいくら友達だからって許さないからね!」

 立ち上がった俺を追いかけるように裕次郎も走り出す。

「……なんか、楽しいな」

 最後に立ち上がった蘭蔵が呟いた。相変わらず小さな声だったけど、はっきりと聞こえた。

「何か言った?」

 照れくさかったから、聞こえないふりをしてやったけど。

「ん、なんでもない」

 蘭蔵はそう言って笑った。

「何してんの、早く行くよー」

 既に遠くに見える裕次郎が手を振っていた。俺と蘭蔵は顔を見合わせ、そして裕次郎の後を追う。どうでもいいがこいつら意外と足が速い。

「待てよ!」

 必死に後を追う俺の姿は今までとさほど変わらないだろう。けれど、いつも誰かの後を追いかけて言いなりだった今までの俺とは違う。ちゃんと、自分の意志で走っているんだ。
 無性に嬉しくて、楽しくて、意味もなく笑っていたら、二人に変な目で見られた。でもそんな俺を見て二人も笑った。

 やっとのことで追いついて、歩き出した俺達はふと空を見上げる。

 グラウンドを走る運動部の声など吸い込まれてしまいそうなくらい燃えるように赤く染まった空と、その中に浮かぶ夕日が静かに俺達を照らしていた。




end...

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あきゅろす。
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