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「つ、付き合うのは無理だ」

ようやく、ようやく自分の気持ちを認めた嵩斗に、ああよかったと息を付いた直後の言葉だ。マサシは口を開いたまま固まった。耳を疑った。
なんで、ここに来て再び否定するのか、理解できずにただただ凝視した。

「な、なんで!?お前、自分の気持ち認めただろ!今頷いたの、ちゃんと見たぞ!?今度という今度はやっぱり違うは認めないぞ!?」

「う、いや、確かに気持ちは……そうだけど」

「いやいやいや意味が分かんねぇ。両思いでなんでそこで踏み留まろうとするんだよ」

「ん、んー」

頭をかいて下手に誤魔化そうとしているが、ふざけている訳ではない。
初めて見るほど気弱な嵩斗の様子は珍しく、マサシの興味と同情を誘った。

「何を考えてるのかは知らないけど、好きならさ、一緒にいたいとか、一緒に色んな事したいとか、思うと思うんだけど。そお言うのが付き合うって事だろ。嵩斗はしたくないの?」

それには同意する。あの正直者と一緒に過ごすのはとても…………楽しいだろう。心惹かれるが。

「そうだけど、でもなぁ」

「……嵩斗ってさぁ、不良相手に啖呵切ったり強気に出れるし、結構自信家っぽいくせに……いざとなったら何でそんなに女々しいの」

女々しい……あまり言われた事はないが、確かに今の己はそうだと思う。
だがそれには理由がある。
今となっては正平を思う度につきまとってしまう困った思い。
ここまで色々と心をエグられて、もう傷など付きようがないと思っていたが、そうではなかった。
言えば確実に傷付く。
己の自尊心が。

「だって怖いんだよ!」

しかし気付けば叫んでいた。
今更マサシに何を取り繕うというのかと。

「俺、今まで誰かと付き合うとか考えと事無かった。無かったんだ!……確かにずっと、好きになる相手は野郎ばっかりで、自分はそうなんだろうと思ってたけど、けど、いざ実際そんな状況になってみたら、すげぇ怖くなってる」

本当に後戻りできない状態に、怖じ気づいた。
自分はゲイだホモだと言っていながら、誰よりも自分自身がそうと納得していなかったのだ。
その情けない状態に、嵩斗は今更ながら向かい合っていた。

「お前……本当にバカだなぁ……」

「分かってる。今更何言ってるんだってな。ホントに俺、すげぇ自分が情けない」

「いんや、悪い。そうじゃなくてさ……俺、お前じゃないからさ、その悩みをはっきり分かってやる事は出来ない。でも悩むだろう事くらい簡単に想像が付くよ。そっかお前……『大澄正平』と付き合うのを躊躇ってるだけじゃあ無かったんだなぁ」

しみじみと落ちた言葉に、全てをさらしてしまったと嵩斗は息を付いた。

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