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『発信者:大澄正平
今日は晴れたな。
屋上に来て下さい』
なんで敬語なんだ。
昨日会えなかったのがそんなに堪えたのか。
結局、昨日は会えなかったのだ。
雷と共に巻き起こった豪雨と突風は時間の経過とともに酷くなる一方で、昼頃には大雨にも洪水にも雷にも、つけれるだけの内容に警報が付いて、ついには午後休校の処置になった。
交通機関が止まるのも時間の問題で、友人と遊ぶと決めた者以外は早々に家路についた。
もちろん嵩斗もその部類だ。正平には自分でもちょっと冷たいと思う様な内容のメールを送り付け、会う予定を延長した。
曰わく
『発信者:菊原嵩斗
今日は無理だな。また明日』
うかがうでも提案でも無く、今日は無理と決定事項として連絡した。
それに対し返信は
『発信者:大澄正平
すごく嫌だ!今すぐ会いたい!お前の顔を見たい!しかし無理を言うと怒るだろうから我慢することにする。とても残念だ。明日は必ず会いたい。』
とまぁ直球な文で来た。
何とも言えない内容に、中身を誰にも見られたくなくて速攻で携帯をしまい込んだ。
もちろん返事はしていない。
なんて返せって言うんだ。
そして翌日のこのメール。学校が始まる前に送ってくるという事は、わざわざ不良が早起きしたのだろうか。
『発信者:菊原嵩斗
晴れて良かったな。昼に行く。』
果たして、豪雨の後の屋上が、昼に使える状態に戻っているのだろうか。
そこはこれからの天気次第だ。今から気にしても始まらないだろうと、ひとまずは学校に向かうのだった。
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太陽は正平に味方したらしい。
サンサンと輝く太陽は梅雨の時期には珍しい。お陰でグラウンドの水溜まりは見る間に消えていった。屋上だって綺麗サッパリとしている事だろう。
こんな日に屋上だなんて、これは肌が焼けるだろうな。
普段から河原を走りまくって焼けまくっているので気にはならないが、眩しく、かつ暑くないのだろうかと屋上に続く扉を睨みつけた。
「あー!菊原さんだ!来たんすね!」
階段の下から届く元気な声には覚えがあると後ろを振り向けば、先日の元気な後輩くんがいる。
「あー、誰だっけ」
チラリと名前を聞いた気はするが、自己紹介は受けていない。流石に一年の不良は一々覚えていなかった。
「ども、朝比奈っす!どうぞどうぞ、ショーヘイさんが屋上で待ってるんで、出ちゃって下さいよ!」
「ああ……」
にこにこと階段を上がりながら、ささ早くと屋上を奨める朝比奈くんに、溜め息をついて重い鉄の扉を押し開いた。
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