15 金丸はそれはもう大変に息を切らせていた。 目立ちたくない一心から一刻も早く人気のない場所へ行こうと、全速力で走る嵩斗を追いかけていたからだ。 嵩斗はこいつ、意外と粘って付いて来たな〜と不良の根性を見直した。 「てめぇ、逃げやがって……覚悟出来てんだろうなぁ?!!」 出来てません。 だってここでガチのケンカをすれば、漏れなく殺伐とした生活が待っている。それは、真剣に嫌だ……。 「ちょっと待った!待って!俺が大澄さんに勝ったって言うのは、あー、正しくはないです!」 間違いでもないので強く言えないのが辛い。 あと挑発してごめんなさい。 優先順位は、周囲に迷惑をかけない>平和生活、となっているのでおかしな事しました。 マサシが知ればその不器用さに涙するだろう。 「あ?何だと?」 「実は不意打ちで勝ったようなもんなんですよね。俺が大澄さんより強いなんてあるわけ無いって言うか、どうしても殴る必要があったというか、なりゆきというか。だからそんな大澄さんとケンカした訳じゃないし、ましてや調子に乗るとかあり得ないんで、だから」 「だぁから、何だよ」 「俺と今勝負する意味って無いと思うんですよねー。だって俺があんたに勝てるように見えますか?」 「関係ねぇ。おちょくりやがって、ぶっ殺さねぇと気が済まねえんだよ!」 ほんと挑発してごめんなさい……。 とにかくこのままでは、いつ殴りかかって来るか分からない。 不本意だが。本当に不本意だが、応えるしかないだろう。そしてその後必ず正平に会って、二度と絡まれずに済む様手を打ってもらいたい。 言い足りない程不本意だが。 このままでは本当に喧嘩漬け生活が始まってしまう。 とりあえず弁当の安全を確保した。 そっと非常階段の脇に置いて、金丸の前に立つ。 そうしてついに金丸が動きだそうとした時……。 「きくはらぁぁぁ!!!!!!!」 あの御仁の叫び声が校舎横に響き渡った。 「な」 「大澄?」 不良とはタラタラと歩くイメージしかなかったが、案外そうでもないらしい。 だって本日、2度目だ。 不良が全力疾走して迫ってくる様を見るのは。 _ [*前へ][次へ#] [戻る] |