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金丸はそれはもう大変に息を切らせていた。
目立ちたくない一心から一刻も早く人気のない場所へ行こうと、全速力で走る嵩斗を追いかけていたからだ。

嵩斗はこいつ、意外と粘って付いて来たな〜と不良の根性を見直した。

「てめぇ、逃げやがって……覚悟出来てんだろうなぁ?!!」

出来てません。
だってここでガチのケンカをすれば、漏れなく殺伐とした生活が待っている。それは、真剣に嫌だ……。

「ちょっと待った!待って!俺が大澄さんに勝ったって言うのは、あー、正しくはないです!」

間違いでもないので強く言えないのが辛い。
あと挑発してごめんなさい。
優先順位は、周囲に迷惑をかけない>平和生活、となっているのでおかしな事しました。

マサシが知ればその不器用さに涙するだろう。

「あ?何だと?」

「実は不意打ちで勝ったようなもんなんですよね。俺が大澄さんより強いなんてあるわけ無いって言うか、どうしても殴る必要があったというか、なりゆきというか。だからそんな大澄さんとケンカした訳じゃないし、ましてや調子に乗るとかあり得ないんで、だから」

「だぁから、何だよ」

「俺と今勝負する意味って無いと思うんですよねー。だって俺があんたに勝てるように見えますか?」

「関係ねぇ。おちょくりやがって、ぶっ殺さねぇと気が済まねえんだよ!」

ほんと挑発してごめんなさい……。

とにかくこのままでは、いつ殴りかかって来るか分からない。
不本意だが。本当に不本意だが、応えるしかないだろう。そしてその後必ず正平に会って、二度と絡まれずに済む様手を打ってもらいたい。
言い足りない程不本意だが。
このままでは本当に喧嘩漬け生活が始まってしまう。

とりあえず弁当の安全を確保した。
そっと非常階段の脇に置いて、金丸の前に立つ。

そうしてついに金丸が動きだそうとした時……。

「きくはらぁぁぁ!!!!!!!」

あの御仁の叫び声が校舎横に響き渡った。

「な」

「大澄?」

不良とはタラタラと歩くイメージしかなかったが、案外そうでもないらしい。

だって本日、2度目だ。

不良が全力疾走して迫ってくる様を見るのは。

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