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宗ちゃんから賜った忠告に気を引き締めたばかりだというのに、当然のように問題は起こった。
「お前、昨日大澄を倒したんだってな?ちょっとツラかせよ」
「……あの状況が『倒した』と表現して良いなら、まぁ、倒したな」
またしても現れた不良に隠す事無く溜め息を吐く。
今回現れたのは、将来頭皮が不安になるほど髪を脱色した、倣ったように目つきの悪い不良だった。
誰かが「金丸だ、金丸が来た…」と興奮して呟いて、あぁそういえばこいつも中々に有名な奴だったと当たりを付ける。
しかしまあ嵩斗には昨日のショックが大きすぎて、大した驚きにはならない。むしろ昼休みが儚く無くなりそうな上、空腹も手伝ってちょっと不機嫌だ。
ぞんざいな対応に周囲の者も対応に困った。
確かに昨日のあれは倒したとも言えるだろう。
投げたし。
それにしても正平はあきらめが悪いらしい。殴られて投げられる程の拒絶にあっても懲りないとは。
「また大澄さんからの呼び出しですか?」
「あ?違ぇっつの。テメェが大澄に勝ったって事は、テメェを倒せば大澄より強いって事じゃねえか。はっ、まさかこんなヤツに負けるなんて、あいつ弱くなったんじゃねぇ?」
「さあ、どちらかと言うと頭が弱くなったんだと思う」
一部の生徒がぐふりと笑いを堪えた。
可愛いんだよちくしょー、だもんな。
「あ?何かしんねぇけど、テメェが大澄を殴って投げたって話はきっちり聞いてんだよ。なら調子のらねぇようにきっちりぶっ殺してやるよ」
「……えーっと」
さすが不良、昨日は学校にいなかったのか?又聞きかよ。しかも話をした奴、寸劇の話はしてないらしい。
地域のボスのご乱心だ。
そりゃ、言い難いだろう。
なーんか、このままでは話が長引きそうだ。
「よし分かった移動しよう。このままだと邪魔になるし」
言って弁当袋と立ち上がる。
は?という金丸の反応をさぁさぁと急かす。
「……弁当?」
我慢が出来なくなったのか、マサシの呟きが落ちる。
はっと皆が弁当に注目した。
……不良とのケンカになぜ弁当が要るのか。
「腹減ってるから。すぐ食いたい」
「「「は?」」」
意味を考えて固まる金丸の横をすり抜ける。しばらく進んで待つように振り返ってみれば、
「テメェ……っ!」
ようやく理解したのか歯ぎしりと共に向かってきた。廊下を走るな。
もちろん嵩斗も走る。
つまり嵩斗は金丸と場所を変えた後、無事に昼ご飯を食べるつもりなのだ。
ぶっ殺すとのたまった金丸とやりあった後に、である。
嘗めているとしか言いようがない。プライドの高い不良が怒るのも無理のない話だった。
嵩斗は走りながら、さあどこに行こうかと考える。
金丸の仲間が待ちかまえているなら、何処にいるだろうか?もちろんそこは避けよう。先日の屋上なんかは逃げ口が少なくて最悪だった。体育館裏なんかは常套手段すぎて寄りたくもない。たぶんここがデッドゾーンだ。
というわけでやって来たのは校舎横の閑散とした場所だった。
誰も居ませんように、との願いは叶わず―――カップルが居た。男同士の。しかも二組。
「あ、すまん」
もしかしてここはそうゆう穴場でしたか。
「い、いえぇぇぇえうわああ!?」
今にもチッス目前だったカップルは困惑顔から一転、顔を恐怖に歪ませて逃げ出した。
もう一組も慌てて逃げた。
有名な不良が鬼の形相で走って来るのだ。嵩斗も逃げたかった。
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