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世の中何が起こるか分かんないもんだな、というのが嵩斗少年の見解だ。何があるのか〜…の結晶のような自分が言うのだから間違いない。


「おー、じゃあ俺帰えっから、みんな部活頑張れよー」

「あぁ、嵩斗また明日な」

和やかな挨拶は、不意に響いた不協和音に遮られた。
不必要に大きなアクションで教室の扉が開けられるのを、クラスメイト達が呆然と見やる。

ざわっ

とクラスが浮き立てば、登場した本人は満足そうな顔。目立ちたがりなんだな、と分析するがそんな場合じゃない。逃げた方がいい。しかしここは二階の教室。逃げ道は出入り口の扉一つだけだ。そしてそこには関わりたくない種の人物。

「ォオ゛イ、菊原嵩斗はどいつだ」

不良君が現れた。気のせいでなければ彼は一年生。二年の教室に来たというのに随分と態度がでかい。

えっ

と硬直の溶けたクラスメイト達が振り向く。なんでお前?とみんなの目が語っている。嵩斗は冷や汗が流れる背中を冷静に感じた。

やっぱり俺に用でしたか。

「オ゛マエが菊原か?ショーヘイさんがツラかせってよ。ちょっと来いよ」

一々凄むなよ。弱く見えるぞ。なんて言ったら一悶着じゃすまないかなぁ。

嵩斗は必死に表情を押し殺し、どうしようかなーと考えた。
気のせいかついさっきまで平和にも一緒にハシャいでいた筈のアツシとサトシとマサシが、にじにじと距離を置きだしている。
おいおい逃げるなよお前ら。
彼らの顔も一様に、おまえ何やったんだ、と語っている。『ショーヘイ』と言う名を聞いて更に目を剥いたようだ。

『ショーヘイ』とは同じ学校の同級生、大澄正平の事だ。いつの時代にもいる札付きの不良というやつで、学校のボス……を飛び越えてご地域のボスにまでなった男。
喧嘩万歳な生活をしているはずのこの男から、なぜ菊原嵩斗は呼び出しを喰らったのか?どこでそんな接点を持ってしまったのか?
そう、皆の心は知らず一つになっていた。

菊原嵩斗ってどんな奴?と聞かれれば、友達のアツシは『運動神経はいい、でもそれ以外は普通じゃね?普通』と答えるだろう。
ではサトシはどうか。これも同じ様に答える。『見た目にそこそこ気を使って、程々に流行りに乗っかる、今時の奴だよ。突き抜けた個性はないかなぁ、あ、でも良い奴だよ。普通に』とか何とか。
こんな可もなく不可もなくな彼が、どうしてご地域最強の不良と関わってしまったのか?

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あきゅろす。
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