5000hit記念小説 それでも嬉しい日‐1 それでも嬉しい日 雲ひとつない綺麗な青い空。 そんな空を見上げて、足跡ひとつついていない雪に足跡をつけて歩く。 今日は宿屋に泊まるため、この場にいるのは私一人。 雪に足跡をつけて歩くって、皆一度はしたいと思って、してるはず! 「ここまで来れば、良いかな」 街から出て、ある程度離れた場所まで来る。 もちろん、結界魔導器の中から出るわけだから、ホーリーボトルはちゃんと準備・使用済み! 別に武者修行するわけじゃないからね! ――私が街から、正しく言うなら皆から離れたのは理由がある。 たいしたことじゃないけど、私にとっては大切なこと。 それは…… 「叫びたかったんだよね。 メリークリスマース!」 そう、これを叫びたかったんだ。 異世界からやって参りました私。 それこそ、毎年この日は言ってた。…さすがに叫んではなかったけど。 だって、クリスマス! 日本人なら、誰でも知ってはいると思うんだ! 「さすがにテルカ・リュミレースじゃ、クリスマスはないから何かしたりってないけどさ。小さい頃にプレゼントもらったり、ケーキ食べたりとか。大切な思い出だし」 雪が降っている場所で、今日という日に気付いてしまったら、どうしても言いたくてたまらなかった。 「あーでも、言ったらすっきりした!よし、戻って買い出しだー!」 ほんの少し、切ない気持ちになったけど。 ちゃんと切り替えて頑張るんだ――。 [*前へ][次へ#] |