短編集
笑いのツボ【TOP】
どんなに寒くて、
誰もが「……」なんて凍りついても、
笑ってしまうのです。
笑いのツボ
ここに、寒いギャグを平気でサラッと爽やかな笑顔で言う男と、何事もなかったように真面目な顔をして言っちゃう2人組がいる。
その2人の名前は
クレス・アルベインと
チェスター・バークライト
彼らのギャグを聞いたものは必ず次の言葉を失うのだが……。
「カレーはかれい」
「……」
ひとり撃沈。
爽やかな笑顔で親父ギャグか、というくらい寒いギャグを言われ「はい?」としか答えることができない少女――すず。
そんな彼女の反応は至って普通。一般的な人ならばこんな反応しかできないだろう。これが普通の反応なのだ。
しかし、ここに一般とはかなりかけ離れたものが一人……。
「いっ、いや……なにそのギャグ!当たり前なこと言って」
クスクスと笑い、いまにもお腹を抱えこみそうな少女。終いには、笑いすぎで腹痛になりそうなほど――それほど彼女は爆笑していた。声を必死に押し殺しながら爆笑していた。
無表情に近い表情をしたすずは隣で笑いを必死にこらえて……いやこらえきれず爆笑中な彼女――カナを不思議そうに見つめる。
そして、疑問に思っている事を率直に聞いてみた。
どうしてもわからないのだ……。
「笑えますか?」
「えっ、あれ?す…ずちゃんは、笑えないっ…の?」
必死に笑いをこらえつつ(こらえられていないのだが)そう問い返す。しかし、笑いがすぐにとまるわけもなくカナの言葉は途切れ途切れ。何を言ってるのか聞き取るのが精一杯。
彼女の言葉に対しすずは「はい」と力強く答えた。そんな幼いすずの答えを聞いたクレスはがくっとうなだれる。まさかここまで力強く否定されるとは――と。
(寒いギャグを言ったのはクレスだったりした)
「私は面白いと思うんだけどなぁ……当たり前すぎるし、なっ、なにより――くっ…クレスの顔が!」
そのときのクレスを思い出したのか、また笑い始めた。
「……ここまで笑うなんて想像してなかったんだけど」
「すずちゃんを笑わせようとしたんだが――まさかカナとはな」
誰がこんなにウケるなんて想像できただろうが?
本人にだって予測不可能な出来事。
いつも誰かにギャグを聞かせても微妙な反応しか返ってこないのだから。
「じゃあ、これはどうだ?……オレは絶対にダオスをだおす!」
「ちょっ……!なにっ!そのダオスをだおすって…いや、倒すけどさっ」
クレスに続けと言わんばかりに今度はチェスターが寒いギャグを発す。チェスターまで、笑わせないでよ、なんて言いながらまた笑いのツボを刺激された。
「なに、なんでカナったら笑ってるの?」
腹を抱え、おかしいくらいに笑う彼女を見てアーチェは何事かと近くにいたすずに聞いてみた。
「爆笑してるんです」
「爆笑って?またなんで?」
すずの言葉にたくさんのクエスチョンマークを浮かべ、意味がわかんない……という表情をする。まあ、それもそうだ――爆笑する意味がこれでは全くわからない。
クレスとチェスター、この2人と居て爆笑するなんてあるだろうか?
説明を待っているとクレスが口を開いた。
「いや、僕らがすずちゃんを笑わせようとギャグを言ったら――」
「わかった!カナがなぜか爆笑ってわけね……。よく2人の寒いギャグで笑えるわよね」
「寒いってなんだよ!」
「えっ、寒いじゃん。聞かなくてもわかるし」
以前、チェスターから寒いギャグを聞かされ身も心も凍えそうになったアーチェは耳を塞いだ。
ここでいつものようにチェスターVSアーチェのバトル勃発。
……それを止めるかのようにカナが口を開いた。
「アーチェは笑えないの?」
楽しいと思うんだけどなぁ、なんて呟きながら自分と同じ意見の人はいないのかと問う。
しかし、アーチェはそんな彼女の儚い希望に対し首を横に振った。
「ぜぇぇったい笑えない……それに笑いたくない!」
「……ダオスをだおす――笑えますか?」
「ちょ、すずちゃん!わっ、笑わせないでっ!」
真面目な、普段と一切変わらぬすずの顔を見て更に腹を抱え、しまいには窒息死しそうなカナの姿がそこにあった。
そして、笑いすぎて腹筋が痛くなり、大変だったとかなんとか――。更に更に……笑い茸でも食べたのか?と聞きたいほどの爆笑だったため、ミントが大層心配したとか――。
.
(カナって何に対しても笑うのかな?)
(オレに聞くなよな、クレス)」
(何に対しても笑うんじゃないの?でもあのギャグで笑うなんてありえないー!すずちゃんもそう思うでしょ?)
(はい、全然笑えないです)
((……))
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