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短編集
君に恋い焦がれ【TOR】
なんで、この長髪の端整な顔の持ち主は――



クレアバカなんだろう?




君に恋い焦がれ





今日も耳元あたりで、ヴェイグが「クレアァァァア」っと叫んでいた。ヴェイグさん御乱心。
ほら、よくチョコ中毒者とか聞くじゃない?きっとそれと同じように、ヴェイグはクレア中毒者なんだと思う。





「クレアァァァァァアッ」




「あ、5回目」

「いきなりなに、その回数は?」


指で回数を数え、『ヴェイグのクレアノート』に回数を「正の字」で記す。
あぁ、もう5回も言ったのか……なんて感慨深く(何故かは自分でもわからないけど)していると、マオにカナったら大丈夫?なんて目で見られた。


「ヴェイグのクレア発言が何回目か数えてたの」


たぶんみんな一度はやろうと思ったことがあるんじゃないのかな?なんて思う。
あそこまで何回も固有名詞を叫ばれると数えたくなるのがヒトって生き物……。


「それが5回目っていうのか?」

「うん、そうだよティトレイ」


ちゃんと数えていたんだから間違えない。今日が始まり、歩き始めて数時間。ヴェイグは5回ほど叫ばれましたよ、クレアと。
この言葉を聞くだけで、どれだけクレアさんを大事に思ってるかわかるね!

「でもまだ……今日という日が始まり、歩き始めてそんな時間経ってないだろ?」

「あ、ボクもそれ思った」

「えーっと……ね、いまの計算だと――ヴェイグは30分に1回『クレア』と叫んでいます」


いつ、ヴェイグが叫んだのかノートを見て確認し2人に知らせる。うわー、そんな短い間隔で叫んでいたのか……。私も計算して知ったよ。
今日はあと何回叫ぶんだろ?というかヴェイグって人間だよね?なんて思いつつノートを静かに閉じた。



「なんだかヴェイグったら凄いね」

「えっ……凄いってか怖いよ!?マオは怖くないの!?」

うわぁ、みたいな感じで感心できちゃうマオって――私としたら、そっちのほうが凄いよ!?感心はするけど凄いってとこまではいけない。そしてあの質問に「なんで?」なんて返すことのできるマオのほうが凄いよ。二言目が「えー、カナはそう思わないの?」とか。いや、ありえないでしょ!私はマオのようには思えないです。


「というか――誰かヴェイグを止めなくていいのか?」

ティトレイが物凄い現実的なことを言ってくれた。
そう言われて、耳を澄ませてみる。あぁ、ほんとだ!耳を澄ませ、聞いてみるとむこうのほうから「クレア」とか言ってるヴェイグの声。
……また叫んでる。そしてアニーがとめてる。アニーの声までも聞こえてきた。
止めに行かなきゃ!と私が行こうとする前に、ティトレイが駆け出していた。よし、私も――。

「……これで6回目?」

「いや、マオ止めにいこうよ!」

こっちには暢気なこと言ってる人がいるー!?
とりあえず、助けに行かなきゃ!ティトレイとアニーだけじゃ止められないと思うし。



「後からきてよ」とマオに声をかけてヴェイグが叫んでいるであろうところに走った。
ヴェイグがどれだけクレアさんのことを思っているのかはよーくわかった!
だけど――。


「暴走しないでよねー!」


あぁ、フォルス使って暴走してませんように!





.
(カナ、手伝ってください。ヴェイグさんが……)
(わかってるよ、アニー!)
(よし、いまだ!2人ともヴェイグを抑えろ!)
(やめてくれ!オレはクレアを――。離せ、カナ、アニー!)
(……ヴェイグ!暴走するなら、ここじゃなくて森にして!)




――ここ、とりあえず人が通る場所なんだから。






fin....

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